一九六八年の夏。キューバで漁業指導員をしているアキラは、ハバナの下町で混血娘マルシアに出会った。彼女は、煙草女工であり、銃を巧みに使いこなす筋金入りの女民兵でもあった。アキラは、故郷に旅発つマルシアの後を追って求愛の旅に出た。瀕発する反革命の陰謀に対する厳しい警戒態勢をとる灼熱のキューバの奥深くへと。無償で残業労働をする工場労働者たち。チェ・ゲバラ部隊の戦車兵たちは、広大な原野を開墾している。遂に、アキラは、ゲリラの根拠地シエラマエストラを望む岬の街でマルシアを捜しあてた。しかし、彼女の故郷サンチャゴ・デ・クーバに着いたアキラが見たのは血と犠牲の死者たちの墓標の列だった。アキラは、はじめて彼女が短かい、人生の中で出会った悲惨な革命の歴史を思い知らされた。モンカダ兵舎襲撃一五周年を迎えた古都サンタクララのカーニバル。熱狂のアフロキューバンリズムにのって、嵐のように歌と踊りが渦まいていた。その夜、二人は激しく求めあった。「生きるために死にたい」と身悶えるマルシア。翌朝、彼女は幻のように消えた。厳しい孤独と憎悪をあのつぶらな瞳に宿し、別れの言葉も残さず去っていったマルシア。アキラには、あの夏の日の思い出が、疼痛のように灼け残っていた。
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